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アルコール摂取でがんのリスクが高くなる。飲酒量との関係は?

いきなりですが、みなさんは日本人の死因で一番多い病気をご存知ですか?平成27年度に厚生労働省が発表した人口動態統計の年間統計によると、日本人の死因で一番多いのは「がん(悪性腫瘍物)」でした。 がん発症リスクの要因はいくつかありますが、その中のひとつに「飲酒」が挙げられます。普段から健康を意識していても、お酒が好きな方はもちろん、人からすすめられるとついつい飲んでしまう方も多いのではないでしょうか。 ここでは、アルコールの摂取とがんとの関係、飲酒によってリスクが高くなるとされているがんなどについて紹介していきます。特に飲酒量が増えてきた自覚のある方やそのようなご家族がいる方には注目していただきたいです。

アルコール摂取でがんのリスクが高くなる。飲酒量との関係は?


なぜアルコールよってがんが発症するのか?


2016年11月に開催された世界がん会議では、2012年に飲酒が原因でがんを発症した方は約70万人以上、がん関連の死者数は約36.6万人以上という調査結果が報告されました。


では、なぜ飲酒によってがんを発症するのでしょうか。それは、お酒に含まれるアルコールとアルコールが分解されることで作られるアセトアルデヒドに原因があります。


まずアルコールとアセトアルデヒドには発がん性があります。つまり、これらの物質はがんを引き起こす可能性があるということです。


アルコールは体内に入ると、酵素の力によってアセトアルデヒド、酢酸の順番で分解されます。そして最後には水と二酸化炭素に分解され体外に排出されるのです。


ですが、私たちの中にはこれらの物質を分解する力(酵素の働き)が弱い人が存在します。酵素が持つ力は遺伝によって決まるからです。厚生労働省からは、日本人の場合はアルコールからアセトアルデヒドに分解するアルコール脱水素酵素1B(ADH1B)の力が弱い人は約7%、アルデヒドから酢酸に分解する2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の働きが弱い人は約40%存在すると報告がされています。


アルコールの分解に関わるADH1B、ALDH2の働きがともに弱い人が積極的に飲酒をおこなうと、口腔がん、咽頭がん、食道がんの発がんリスクが特に高くなることも確認されています。




飲酒によってリスクが高くなるがんとは?


2007年に世界保健機構(WHO)が行った評価では、飲酒が原因で発症するがんがいくつか報告されました。下記に一覧をまとめます。


飲酒が原因とされる「がん」


●口腔がん

●咽頭がん

●食道がん

●肝臓がん

●大腸がん

●乳がん



先に紹介した世界がん会議では、飲酒と最も関連が強いがんは食道がん、次に大腸がんであると報告されました。これはお酒を体内に摂取したときに、他の臓器と比べるとより接触時間が長いためにリスクが高まると推測されます。


ここでは食道がん、大腸がんそして乳がんについて、より詳しくみていきましょう。



食道がん


食道がんでは飲酒と喫煙習慣がその発生リスクを増加させています。国立がん研究センターが行った食道がんと飲酒に関する研究では、アルコール摂取量が日本酒に換算して1日平均1合以上摂取する場合はそうでない場合と比較したときに、食道がんのリスクが増加することを確認しました。食道がんのリスクはアルコール摂取量が1〜2合以上で2.6倍、2合以上の場合にはなんと4.6倍にまで高くなっていました。


この後詳しく説明をしますが、1合(180ml)のアルコール量は瓶ビール中瓶(500ml)に相当します。



大腸がん


大腸がんは国立がん研究センターが発表した2016年のデータによりますと、2014年において男女合わせてのがん死亡数が第2位でした。女性では一番死亡数が多いがんです。


厚生労働省の報告によると、アルコールの主成分であるエタノールを50g摂取すると大腸がんを発症するリスクは1.4倍にあがるとされています。日本人と欧米人が同じ量の飲酒を行った場合には日本人の方が大腸がんにかかるリスクが若干高いことも研究から明らかになりました。



乳がん


乳がんは国立がん研究センターによると、2014年において女性のがん死亡数が第5位でした。


厚生労働省の報告によると欧米では乳がんの発症と飲酒の関連が強いとする研究報告が多く、エタノールを10g摂取するごとに乳がんにかかるリスクが7.1%増加するとも報告されています。ですが、日本における研究では女性の飲酒と乳がんの関連はまだ明らかとされていません。




がんと飲酒量の発症との関係とは?


国立がん研究センターは40〜59歳の男女約73,000人に対して「飲酒とがん全体の発生率」に関する調査を行いました。その結果、男性においてはアルコール摂取量が日本酒に換算して1日平均2合以上飲酒を行う場合、がんの発生率が時々飲酒するグループと比べると明らかに増加していることを確認しました。がん発症リスクは1日に平均で摂取するアルコール量が2〜3合の場合には1.43倍、1日3合以上の場合には1.61倍になります。


公共社団法人アルコール健康医学協会によると、日本酒1合(180ml)というのはビール中瓶1本(500ml)、焼酎0.6合(約160ml),ワイン約1/4本(約180ml)に相当します。


毎日の晩酌で中瓶を2本以上飲む人や付き合い等でお酒を飲む機会の多い人は、ぜひこの機会に飲酒量を意識してみてください。


なお、女性における調査では傾向を確認することができませんでした。国立がん研究センターによると、ほぼ毎日飲酒をしている女性というのが調査対象の12%しか居なかったため、傾向を把握することは難しかったとされています。これに対してほぼ毎日飲酒をしている男性は調査対象の70%にも及びました。




飲酒と一緒に行うとがんの発生率が高くなるのは?


飲酒と一緒に行うことでがんの発生率を高くするのは、「喫煙」です。


先ほど「がんと飲酒量の発症との関係とは?」で紹介をした研究では、飲酒量と喫煙習慣の関係についても調査を行っていました。


その結果から、喫煙者においては飲酒量の増加に合わせてがんの発症リスクも増加するということが明らかとなりました。喫煙者の場合、お酒を毎日飲むだけでがんが発生する可能性は1.69倍以上になります。1日に平均で摂取するアルコール量が日本酒に換算して2合を超えてくると1.93倍、平均3合以上にもなると2.32倍です。


それに対して非喫煙者の場合には、飲酒量が増加してもがんを発症する可能性は1倍前後を推移しています。


本研究を行った国立がん研究センターは、飲酒と喫煙が合わさることでがん発症リスクが高まるのは


エタノールをアセトアルデヒドに分解する酵素が、たばこの煙の中に含まれる発がん物質を同時に活性化してしまっているとも考えられています。

引用元:「国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ」より


と推測をしています。


飲酒と喫煙の関連については、解明されていない部分もあるため、今後の研究に注目が集まります。




アルコールを摂取する場合の注意点について


飲酒によりアルコールを摂取する場合の注意点としては、とにかく「飲み過ぎない」ということです。日本酒に換算した飲酒量が2合を超えてくると、非喫煙者の方であってもがんにかかる可能性が高まることはこれまでの研究から明らかです。


特に喫煙者の方の場合には、がんのリスクは非喫煙者の方に比べるとより高まっていることから、より飲酒量に対する意識を持つ必要がでてきます。


アルコールの過剰摂取や喫煙は生活習慣の乱れ、さらには生活習慣病の発症につながる恐れがあります。実際にアルコールの過剰摂取は、BMIが22以下の男性において2型糖尿病発症との関連していることが国立がん研究センターより発表されています。


まずは飲酒量の目安として、1日1合(ビール中瓶1本)を意識してみてはいかがでしょうか。もし過剰な量の飲酒を止められないというときには、場合によってはアルコール依存症など治療が必要なケースもありますので、専門医への受診をおすすめします。



参考情報:

平成27年(2015)人口動態統計(確定数)の概況(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei15/

飲酒によるがん死者、2012年に36万人 国連機関調査(AFP)

http://www.afpbb.com/articles/-/3106716

がんを予防するには?(healthクリック)

http://www.health.ne.jp/library/3000/w3000508.html

日本人のためのがん予防法(がん情報サービス)

http://ganjoho.jp/public/pre_scr/prevention/evidence_based.html

飲酒と食道がんの発生率との関係について(国立がん研究センター 予防研究グループ)

http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/338.html

2016年のがん統計予測公開(国立がん研究センター)

http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/press_release_20160715.html

テーマ02 「あなたはお酒が強い人?弱い人?」(国税庁)

http://www.nta.go.jp/tokyo/shiraberu/sake/seminar/h19/02/02.htm

アルコールと癌(がん)(e-ヘルスネット)

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-008.html

2014年のがん罹患数、死亡数予測公開(国立がん研究センター)

http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/press_release_20140710.html

飲酒とがん全体の発生率との関係について(国立がん研究センター 予防研究グループ)

http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/269.html

飲酒の基礎知識(アルコール健康医学協会)

http://www.arukenkyo.or.jp/health/base/

飲酒と2型糖尿病の発症について(国立がん研究センター 予防研究グループ)

http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/273.html


著者情報

治療ノート編集部
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