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アルツハイマー以外の認知症も? 精神疾患と間違われることもある、前頭側頭葉型認知症について

高齢化社会となり、認知症や軽度認知障害を患う人が増えています。厚生労働省の調査によると、65歳以上の認知症患者は2010年時点で全国で約439万人と推計され、今後ますます増える見通しです。認知症といえばアルツハイマー病が有名ですが、前頭葉側頭葉型認知症をはじめとして、アルツハイマー以外の認知症もあることが知られています。症状や治療は、アルツハイマー病とどこが違うの? 前頭葉側頭葉型認知症についてお知らせします。

アルツハイマー以外の認知症も? 精神疾患と間違われることもある、前頭側頭葉型認知症について


増え続ける認知症


厚生労働省の資料によると、2012年時点で認知症高齢者(65歳以上)は約462万人で65歳以上の方の有病率15%と推定され、認知症の一歩手前である軽度認知障害(MCI)の人は約400万人、推定有病率13%と報告されています。


また、認知症高齢者の中で、「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の方は、2012年の時点で305万人と言われています。


「認知症高齢者の日常生活自立度」とは、認知症の方にかかる介護の度合い、大変さをレベル分けして評価したもので8段階に分けられていますが、レベルⅠはおおむね自立した生活が可能で、レベルⅡ以上では支援が必要となることが多いようです。


レベルⅡ以上の支援が必要な認知症高齢者は、東京オリンピックの予定されている2020年には410万人、2025年には470万人と、急速に増加することが推定されています。認知症の方や家族が安心して暮らせる環境の整備が望まれているといえるでしょう。




認知症って、どんな病気?


日本神経学会のガイドラインによると、認知症とは、「一度正常に獲得した認知機能が後天的な脳の障害によって持続性に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすような状態」を言います。


認知症の中では、アルツハイマー病がもっとも有名で、頻度も高いと言われています。症状としては、物忘れや多幸感がよく知られていますね。


※アルツハイマーの症状については、治療ノートでもまとめてあります。ぜひご利用ください。


【初期症状 】


はじめは新しいことが覚えられなくなるなど、記憶力が低下してきます。こうした状態を軽度認知障害(MCI)とよびます。 加齢による良性の物忘れよりも進行が早いことが多く、そうした記憶症状が進むにつれて日常生活機能にも障害があらわれ、外出の際に道に迷うことやお金の扱いに困ることも増えます。

進行過程において、今までできていたことができなくなることで自信をなくす、やる気を失うなどと、感情や人格に変化がでることもあります。


治療ノート アルツハイマー病のページより

https://www.c-notes.jp/diseases/alzheimer/symptom




アルツハイマー病以外の認知症もあるの?


あまり知られていないかもしれませんが、アルツハイマー病以外の認知症もあります。


アルツハイマー病の次に多いのは脳血管性認知症で、これは繰り返す脳梗塞などにより認知症をきたすものです。それからレビー小体型認知症、前頭葉側頭葉型認知症と続きます。


この中でも、前頭葉側頭葉型認知症は、比較的若年での発症が目立ち、64歳以下の認知症ではアルツハイマー病についで多く、特徴的な行動様式を呈することで知られています。




前頭葉側頭葉型認知症とは? 精神疾患に間違われることも!


前頭葉側頭葉型認知症(frontotemporal dementia, FTD)とは、昔はピック病とも呼ばれた認知症で、前頭葉と側頭葉の変性に起因しています。


前頭葉や側頭葉に限局(狭い範囲内に限られること)した神経細胞の脱落が見られ、残存する細胞内にタウ蛋白やTDP-43, FUSなどの異常蛋白が蓄積しているのが特徴です。


気になる症状ですが、物忘れなどはあまり見られないのが特徴で、行動異常が見られやすいです。そのため、初期の段階では専門医でも診断が難しいこともあり、精神科に紹介されてしまうことがしばしばあります。


では、具体的にはどんな異常行動が見られるのでしょう? 


NHKにて2016年6月8日に放送された「総合診療医 ドクターG」の症例が前頭葉側頭葉型認知症でしたが、この番組内で紹介された患者さんは、窃盗を働いて警察に身柄拘束されたことが診断の契機となりました。


番組で挙げられていた症状には次のようなものがありました。


● 窃盗
● 仕事の意欲低下
● 怒りっぽくなった
● ふさぎこむようになった
● 身だしなみがだらしなくなった
● お客さんにセクハラをしたことがある
● 毎日夕方の決まった時間に散歩に出かける。同じことを繰り返す。
● 言葉に詰まるようになった。


これだけでも、物忘れや多幸感で知られるアルツハイマー病とはかなり違うことがおわかりいただけたでしょう。


全体的な行動の特徴としては、「反社会性」があげられ、窃盗や性的逸脱行為などがよく知られています。周囲に無関心になり、自分勝手になると言われ、同じ行動をしたがったり、同じものを食べたがったりといったこだわりが見られることが多いようです。


また、言語の障害が見られたり、筋萎縮や、筋力低下などの症状がみられる場合もあるようです。


こういった症状のため、精神疾患などと間違われて診断が遅れてしまうことがまれではありません。中高年層でこのような異常行動が見られた場合、前頭葉側頭葉型認知症の可能性も頭の片隅に置いておくとよいかもしれません。




どうやって診断するの?



前頭葉側頭葉型認知症は、血液検査などでわかるものではないので、基本的に臨床症状から診断します。1998年にNearyらが発表した診断基準が使われることが多いです。


また、脳MRI検査やPETなどが診断の役に立つこともあります。この場合、前頭葉や側頭葉が画像上萎縮していたり、グルコースの代謝が落ちていたりといった所見が観察されます。これ以外にも、タウ蛋白を可視化するPET薬剤の開発もすすめられています。




治療法、対処法は?


残念ながら、特効薬はありません。


アルツハイマー病の治療に使われるアリセプトなどの薬を使うことがありますが、あまり効果はないようです。


行動異常には抗精神病薬が使用されることもありますが、これも症状を抑える対症療法のみで、認知症そのものをなおす働きはありません。


治ることはありませんが、正しい日常生活支援を受けるためには、まずは正確な診断を受けることが必要です。


身の回りにいる家族が、本人の変化にいちはやく気付き、病院への受診をすすめたほうがいいでしょう。




京大チーム、前頭葉側頭葉型認知症のメカニズムの一端を解明か


前頭葉側頭葉型認知症において、タウ蛋白などの異常なタンパク質がなぜたまるのかはいまだにわかっていません。


10月10日、京都大学iPS研究所は、井上晴久教授(幹細胞医学)らのチームが、iPS細胞を利用して、前頭葉側頭葉型認知症のメカニズムの一端を解明したと発表しました。


論文は、同日付でサイエンティフィック・リポートという電子版科学誌で発表されています。チームは、患者二人から作成したiPS細胞を脳の神経細胞に変化させて病態を再現したところ、カルシウムイオンの神経細胞内への過剰な流入がタウ蛋白の蓄積に関与していることがわかりました。


また、カルシウムイオンの流入を阻害すると、蛋白の蓄積が少なくなることもわかっており、同じ研究にて、タウ蛋白の蓄積した細胞には細胞死が起こりやすいことも報告されています。


カルシウムイオンの流入が細胞の変性を引き起こすのですね。予防薬の開発につながる可能性を期待したいです。


また認知症に関して、治療ノートでもまとめております。ご参考にして頂ければ幸いです。


治療ノート 認知症のページ

https://www.c-notes.jp/diseases/dementia/symptom



参考情報:

前頭側頭型認知症(FTD)とは(認知症ねっと)

https://info.ninchisho.net/type/t40

「認知症の前兆(軽度認知障害)を見逃さないで!」(T-PEC)

http://www.t-pec.co.jp/health-news/2014/01.html

認知症の前段階MCI 生活習慣改善で症状回復も放置で発症50%(NEWSポストセブン)

http://www.news-postseven.com/archives/20151210_369041.html

秋葉副大臣会見概要(認知症施策について)(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000024488.html

認知症疾患治療ガイドライン2010(日本神経学会)

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/nintisyo.html

第26回 前頭側頭型認知症とは?(認知症ねっと)

https://info.ninchisho.net/column/psychiatry_026

前頭側頭葉変性症(指定難病127)(難病情報センター)

http://www.nanbyou.or.jp/entry/4841

患者さん由来iPS細胞とゲノム編集技術を用いて、認知症・パーキンソニズムを来す前頭側頭葉変性症のメカニズムの一端を解明(京都大学)

http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2016/161011_3.html

総合診療医 ドクターG (NHK)

http://www4.nhk.or.jp/doctorg/

第1章 認知症の定義、概要、経過、疫学(日本神経学会)

https://www.neurology-jp.org/guidelinem/degl/sinkei_degl_2010_02.pdf


著者情報

治療ノート編集部
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