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学習療法で笑顔が戻る! 認知症の予防や改善にも効果

高齢者の認知症が増え、家族の介護負担が大きくなっています。認知症は記憶障害から始まり、理解力と判断力の低下・言語障害・人格変化へ発展する病気です。投薬・リハビリ・心理療法などを並行し、進行を食い止める方法が現在の主流です。 ところが、認知症を予防できる脳トレが、注目を浴びるようになってきました。それが、読み書きやドリルといった勉強による学習療法です。 勉強は、学生がやるものという固定観念をお持ちではないでしょうか? 高齢者が勉強で脳を活性化し、老化を予防して認知症を発症しないようにする効果があることが分かってきました。 今回は、学習療法による認知症改善の仕組みや、予防への取り組みについてご紹介します。

掲載日:2016年12月06日

学習療法で笑顔が戻る! 認知症の予防や改善にも効果


認知症改善への取り組み「学習療法」


認知症は、脳の老化によって起こる病気です。厚生労働省が発表した認知症患者数は、200万人(2010年現在)にも及んでいます。年々増加傾向にあり、近年では若年性認知症も心配されています。


医学的アプローチは認知症治療の基本となりますが、予防や改善に向けた取り組みが始まっています。公文(くもん)の学習療法が脳トレとなり、認知症の改善を図ろうというものです。




学習療法が始まった経緯とは? 


学習療法は非薬物療法の1つです。


東北大学医学部の川島隆太教授は、脳のスペシャリストとして名高く、広く知られるようになったのは、大人向けの計算や音読ドリルの開発に携わったことがきっかけでした。


川島隆太教授・公文・福岡県の介護施設の共同研究により、認知症になった脳を活性化して改善するとし、学習療法が始まったのです。


このプロジェクトによる研究は、2005年にアメリカの「The Journals of Gerontology」に検証結果が掲載され、話題を集めるようなりました。


2004年から公文は学習療法センターの設置を全国に導入し始め、2014年現在、国内で1,600を超える介護施設で行われており、アメリカでも導入されています。




そもそも学習療法とは? 


学習療法は公文式を応用した取り組みで、計算や音読ドリルを用い、勉強して脳の前頭葉を鍛える脳トレです。


認知症が進行すると、言葉が出てこない・計算ができない・覚える力が失われるなどの症状に陥ります。


前頭葉とは、発語や計算などの随意活動を司る部位で、学習療法によって前頭葉を刺激し、認知症の予防・改善に役立つ方法です。




前頭葉とは?


前頭葉は額の後方に位置し、運動野と前頭前野の2つで構成され、運動野は身体運動機能を司っています。灰白質で覆われた大脳皮質は神経機能に関わり、前頭前野はこの30%を占める大きな部位です。


川島隆太教授が着目したのがこの前頭前野で、コミュニケーション・理性・思考・感情・記憶・集中力などを支配しています。前頭前野が活性化して司令を出し、脳全体の機能を高めるという研究に取り組んで来られました。




学習療法の方法は? 


学習療法は、毎日続けられるように、個人のペースで取り組むのがポイントです。理想は、1日30分とされています。


ドリルは、難しい問題より単純な問題の方が前頭葉を刺激するという結果が、川島隆太教授の研究で解明されています。ですから、誰でも始めやすく、学習が身に付きやすい方法と言えるでしょう。


介護施設で導入されているのは、計算や音読ドリルで脳を刺激するとともに、スタッフとのコミュニケーションが相乗効果をもたらすためです。ドリルを終えた達成感を抱き、さらにスタッフから褒められる喜びと、二重の作用があります。


単なる勉強ではなく、コミュニケーションを通じて人との関わりを持ち、生きる喜びや意味を思い起こすことができるのです。認知症はこうした感情が薄れていく傾向にあるため、学習療法で笑顔溢れる人生を送って欲しいとの願いも込められています。




使用するドリルの内容は? 


計算式は、1桁の足し算から始まります。単純計算を繰り返すだけで、十分な脳トレになります。


5〜10分と短い時間でも、やっている人とやらない人では圧倒的に記憶力や判断能力に差が出てきます。


読み書きドリルもあり、ポイントになるのは日付・名前・時間を毎回書くことです。認知症患者の家族を悩ませる多くは見識障害で、ドリルに書き記すことで予防や改善につながります。




学習療法で感じたこと・アンケート結果


学習療法は認知症患者だけに効果があるものではなく、介護スタッフや家族に意識の変化があることも分かっています。


認知症患者(※介護施設から見た様子の変化)


● 意欲的になった
● 笑顔が出るようになった
● 意思表示ができるようになった
● コミュニケーション能力がアップした
● 生活リズムの改善



介護スタッフ


● 深いコミュニケーションができるようになった
● 何気ないことへの気づきができるようになった
● 認知症患者を敬う気持ちが生まれた
● 介護の質が上がった
● 観察力の向上
● 介護施設全体の雰囲気が良くなった



家族


● 明るく笑う様子を見て安心感を抱いた
● 介護施設への信頼が強くなった
● 介護スタッフの姿勢に感動した
● 生き生きとしている姿を見ることができて嬉しい
● コミュニケーションを楽しめるようになった




学習療法の効果は? 



2003年、医療法人松田会エバーグリーン病院での調査結果です。この研究で学習者全体の3割の方におむつが取れる、着替えができるなど日常生活の改善が見られました。


また学習療法とともに、もう1つ分かってきていることがあります。普段から読み書きをする人は、していない人に比べ、記憶力の低下が15%遅くなるとアメリカで研究報告がされています。読書などの生活習慣は、自然と学習療法の1つとなっているのでしょう。




要介護度にも好影響!


公文が2015年7月に実施した要介護度に関する調査では、学習療法を1日30分・週5日続けた人と、学習療法を行っていない人を比較しています。


学習療法を続けていた人は要介護度が変わらず、行っていない人は要介護度が重くなったことが分かりました。


認知症を発症していない人も予防のために、学習療法を取り入れることが大切です。加齢で物覚えが悪くなったと感じることがありますよね。しかし、学習療法によって、そうした「うっかり」を予防できるのです。




施設に導入するための条件・費用


学習療法は施設全体での取り組みになります。1人に対し、最低でも週3日以上の学習環境を持てることが条件です。


「学習療法実践士」の資格が必要ですが、研修を受けてノウハウや個人に合うドリルの選び方などを学んだ後、資格を取得することができます。介護スタッフ以外に、事務職でも取得可能です。


費用


● 初期導入費 3万円(税別、2016年11月末日契約分まで)
● 運営備品・物品費用 1〜2万円(標準的な例)
● 毎月の費用 月額2,000円(学習者一人当たり)

12月以降、初期導入費の改定が予定されています。
● 初期導入費 10万円(税別、12月以降契約分)

「KUMON 学習センターHP」より


資料請求・詳しい費用などは、公文の学習療法センターよりお問い合わせください。

https://www.kumon-lt.co.jp/


また、これは患者さん個人では始めることはできません。必ず実施している施設や教室に通う必要があります。


もし学習療法がどんなものか気になる方には『認知症高齢者のための学習療法ドリル』(全6冊:くもん出版)が売られております。




川島教授が所長の「脳の健康教室」


東北大学と学習療法センターが共同研究しているプログラムに、「脳の健康教室」があります。


所長を川島隆太教授が務め、高齢者のために脳の健康促進を目的に行っている講習会です。認知症予防と地域のつながりを結ぶ役割を担っています。


「脳の健康教室」

https://www.kumon-lt.co.jp/b_no_no_kenkokyoshitsu_no_onahashi




学習療法は経済効果ももたらす! 


認知症の予防や改善は、医療費削減につながります。


介護保険では、1年で1人当たり20万円前後もの節約です。医療費削減は、国が最も重要視している政策の1つで、学習効果のもたらす経済効果を踏まえ、今後も導入が加速することが予想されます。


また患者さんや「脳の健康教室」への参加者の方の費用負担ですが、各自治体等によってお値段が違うため、詳細はお近くの自治体等にお問い合わせください。




まとめ


認知症は、高齢化社会となっている今の日本において、さまざまな課題と研究テーマとされています。


認知症の症状が進むと、家族にとって心配なことばかりです。投薬など医学的アプローチも重要ですが、患者本人の達成感や自信を取り戻し、コミュニケーションから生まれる喜びが得られる学習療法も取り入れてみてください。


患者・家族・スタッフ全員が楽しみながらやることが大切です。



参考情報:

学習療法センター(KUMON)

https://www.kumon-lt.co.jp

学習療法で認知症予防!学習療法を進める上での3つのポイント(アットホーム介護)

https://athome-kaigo.jp/learning-therapy

「学習療法」で認知症の人が落ち着きを取り戻した話(認知症ONLINE)

https://ninchisho-online.com/archives/12034/

「学習療法」、認知症改善に効果? 公文が調査結果発表(朝日新聞デジタル)

http://www.asahi.com/articles/ASJ9D6KC8J9DUTFL01D.html

認知症(みんなのメンタルヘルス)

http://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_recog.html

認知症予防など「学習療法」を米国でも検証(日本生活習慣病予防協会)

http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2009/000176.php

歴史と広がり(KUMON)

https://www.kumon-lt.co.jp/a_rekishi_to_hirogari


著者情報

治療ノート編集部
治療ノート編集部です。患者さんが知っておくべき、有益な医療情報を随時お届けします。みなさまからのご意見やご要望お待ちしております。