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受動喫煙で年間1.5万人が死亡! 肺がん以外の病気との関わりも? 健康被害を最小限にする方法は…?

厚生労働省は今年5月、受動喫煙による年間死者数が1.5万人にのぼったという衝撃的な推計を発表しました。JT(日本たばこ産業)がホームページ上でこれらの研究に反論し、国立がんセンターがさらに反論するなど、異例の論争勃発の様相を呈し話題となったのは記憶に新しいところ。受動喫煙は本当に危険? 肺がん以外のがんとも関係が? 受動喫煙の身体への影響についてお伝えします。

掲載日:2016年10月18日

受動喫煙で年間1.5万人が死亡! 肺がん以外の病気との関わりも? 健康被害を最小限にする方法は…?


国立がん研究センター、受動喫煙の肺がんリスクを発表。JTとの論争勃発も


国立がん研究センターが8月31日付で、ホームページにて「受動喫煙による肺がんリスク約1.3倍」と題された記事を掲載し、日本人の非喫煙者に対するメタアナリシス(過去に行われた複数の研究のデータを総合して統計解析を行う方法で、最もエビデンス(科学的根拠)レベルが高いとされる。)から、受動喫煙のある人はない人に比べてリスクが1.3倍であったと発表しました。


この結果を踏まえて研究班は、受動喫煙における肺がんリスク評価を「ほぼ確実」から「確実」にアップグレードしました。


また、世界禁煙デーである5月31日には、厚生労働省の研究班が、受動喫煙に起因する日本での年間死者数が1.5万人にのぼるという推計を発表し、反響を引き起こしました。


こういった一連の発表に対し、JTがホームページ上に反論を掲載したかと思うと、国立がん研究センターがさらに反論するという異例の事態になり、大いに波紋を呼びました。




副流煙は主流煙より危険?


たばこの煙には、約4,300種類の粒子成分、約1,000種類の粒子成分からなる化学物質が含まれており、これらのうち約70種類が発がん物質であるといわれています。


喫煙者本人が吸い込む煙を主流煙、火をつけたたばこの先から立ち上る煙のことを副流煙といいますが、受動喫煙の原因になるのは主として副流煙のほうです。


副流煙にもニコチンやタールなどの有害物質が含まれ、その濃度は主流煙より高いと報告されています(厚生労働省、たばこ白書)。


有害物質は血液を通じて全身に運ばれ、DNA損傷などを介して癌を発生させ、また、動脈硬化などを起きやすくすることにより心筋梗塞や脳梗塞を引き起こします。




実際どのくらい害があるの?


肺がんリスクが1.3倍というと、思ったより少ない、大したことがないという感想を抱いた方もいらっしゃるかもしれません(これに対し、能動喫煙による男性の肺がん死亡のリスクは4.45倍、厚生労働省ホームページより)。


この1.3倍という数字は、これまで発表された欧米人やアジア人を対象とする海外の研究とも一致しています。


しかしながら、これはあくまで全体を平均したリスクで、配偶者がヘビースモーカーで二六時中たばこの煙にさらされているような人はリスクが上がることが示唆されています。


今回研究の対象となった9本の論文でも、一日に20本以上を喫煙するとリスクが上昇するという報告や、一日3時間以上受動喫煙するとリスクが上昇する報告が含まれており、ヘビースモーカーが周囲にいる人は気をつけたほうがいいでしょう。




肺がん以外の病気との関係は?


じつは、受動喫煙との関係が取り沙汰されている病気は肺がんだけではありません。


他に影響が確実視されているものとしては、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症)や脳卒中があります。虚血性心疾患のリスクは2-3倍、脳卒中は1.5倍程度とされています。


いずれも、起こってしまうと命にかかわり、重篤な後遺症の可能性もある病気ですね。家族に喫煙者がいて、何気なく吸っている煙も、そのまま吸い続けていると、こういった重い病気の原因になる可能性があるのです。


副鼻腔の癌や乳癌も、確実とはいえないものの、受動喫煙との関連が示唆されています。癌以外の肺疾患では、喘息の悪化や閉塞性呼吸器疾患を誘発する可能性があります。


また、無視できないのが妊婦や子供への影響です。たまにテレビで特集される「乳幼児突然死症候群」は、受動喫煙との関連が確実視されています(リスクは1.5倍程度)。小児の喘息と受動喫煙との関連もいわれており、妊婦に関しても、子宮内発育遅延や低出生体重児とのかかわりが示唆されています。


また、昨年10月には、京都大学の研究で、受動喫煙により子供の虫歯リスクが約2倍になるという報告がされています。


たばこの害はことあるごとに指摘されますが、能動喫煙と同じように、受動喫煙もことのほか多くの病気と関わっているのですね。特に小さなお子さんをお持ちの喫煙者の方は、真剣に禁煙を検討する必要がありそうです。




知ってる? 三次喫煙について


三次喫煙(残留受動喫煙)という言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。


二次喫煙は一般的な意味での受動喫煙の別名ですが、三次喫煙とは、部屋や衣服に染み付いた煙を吸入してしまうことを言います。乳幼児が最も影響を受ける可能性があると言われています。


「たばこは外で吸っているから大丈夫」


小さな子どもがいる家庭で、たばこを吸いに外やベランダへ行くお父さんやお母さんは、ひょっとしたらこんなふうに思って安心していませんか?


しかし、服についた有害物質を吸い込むことだってありうるのです。




低ニコチン、低タールたばこなら安心?



わが国でよく見かける、「低ニコチン、低タールたばこ」。これなら安心のような気がしますが、実際にはどうなのでしょうか? こういった種類のたばこにも一定量の有害物質が含まれています。


家族が吸っているたばこが「低タール・低ニコチン」でも、安心ということにはなりません。




受動喫煙の害、最小にする方法は?


有害であることが証明された受動喫煙、できるだけ避けたいものですね。吸っている家族や職場の方には禁煙を決意してほしいものですが、すぐには難しいこともあるでしょう。できるだけ煙を吸い込まないためにできることはあるのでしょうか。


たばこの煙は、PM2.5という非常に小さな粒子からなっており、マスクをしてもすり抜けてしまうことがあります。PM2.5対応のマスクであれば、多少なりとも有効かもしれません。


また、空気清浄機は、一部の有害なガス成分の除去ができないといわれており、たばこの害を完全に防ぐのは難しそうです。




日本は受動喫煙対策では後進国! 今後の対策は?


厚生労働省は、8月31日に、15年ぶりに「たばこ白書」(喫煙の県境影響に関する検討会報告書)を改定し発表しました。


その中で、日本の受動喫煙対策はWHOの機関により「最低レベル」と評価されていることを踏まえ、「喫煙室を設置することなく、屋内100%禁煙化を目指すべき」との提言を行っています(WHOによると、すでに世界の49カ国で、医療機関や学校、飲食店などの屋内全面禁煙が法制化されています)。


ところで、2020年には東京でオリンピックが開催されます。頂点をきわめたアスリートたちの祭典を楽しみにしている方も多いことでしょう! 


近年、オリンピック開催地は、「たばこのない五輪」を推進する国際オリンピック委員会およびWHOの意向を受けて、屋内を原則禁煙とする罰則付きの条例や法律を制定するなど対策を行ってきました。


一方、日本では、受動喫煙防止法はあるものの、罰則規定のない努力義務にとどまっており、政府や都知事は、今後対策を検討すると発表しています。老若男女が楽しめるオリンピック、ぜひとも安心して迎えたいものですね!




おわりに


受動喫煙は、ことのほか多くの病気とかかわっていることをご理解いただけたでしょうか? 


じつは、筆者の周囲にも、結婚したり、子供が生まれたりしたタイミングで禁煙を決意した知人が何人かいます。


あなたの大切な家族を病気から守るためにも、喫煙者の方々は、これからでも禁煙をがんばってみてください。



参考情報:

受動喫煙による日本人の肺がんリスク約1.3倍(国立がん研究センター)

http://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/press_release_20160831.html

「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」について

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000135586.html

Secondhand smoke exposure and risk of lung cancer in Japan: a systematic review and meta-analysis of epidemiologic studies(OXFORD ACADEMIC)

https://academic.oup.com/jjco/article/46/10/942/2388060/Secondhand-smoke-exposure-and-risk-of-lung-cancer

Secondhand smoke and incidence of dental caries in deciduous teeth among children in Japan: population based retrospective cohort study(the bmj)

http://www.bmj.com/content/351/bmj.h5397

喫煙者本人への健康影響(がんへの影響)について(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/topics/tobacco/qa/detail1.html


著者情報

治療ノート編集部
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