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1回投与で36万円! 肺がん治療薬「オプジーボ」など高額新薬と膨張する医療費についての考察

高齢化、医薬品や治療機器の進歩により年々膨らみ続ける医療費。日本が医療費の低い国と言われていたのも今は昔、近年では増え続ける医療費をどうコントロールするかが喫緊の課題となっています。一方、肺がん治療薬「オプジーボ」や、C型肝炎治療薬「ソバルティ」など、高額な画期的新薬が次々と開発され、希望を感じている患者も多くいます。これらの新薬は、実際に効果が高く、治療に用いられるべきなのでしょうか? 治療効果などの側面についても解説します(薬価改訂などにつき一部情報を追記 2017年5月8日)。

掲載日:2016年08月29日

1回投与で36万円! 肺がん治療薬「オプジーボ」など高額新薬と膨張する医療費についての考察


オプジーボの保険適用が肺がんにも拡大、しかし…


2015年12月、「オプジーボ」という新薬の保険適用が肺がんに拡大され、これまで治療困難だった進行・再発肺癌の治療成績の上昇が見込まれています。今年(2016年)5月ごろにはテレビなどマスメディアでも取り上げられたことで新しい治療法に希望を持たれた方も多かったのではないでしょうか?



新薬「オプジーボ」とは?


「オプジーボ」(一般名ニボルマブ)は免疫チェックポイント阻害剤という、従来の抗癌剤とは異なった作用機序を持つ新しいタイプの抗腫瘍薬です。当初は悪性黒色腫の治療薬として、米ブリストル・メイヤーズ社と小野薬品により共同開発され、2014年には悪性黒色腫に対し日本で保険適応が承認されています。


肺がんに対しては、海外にて2件の第Ⅲ相試験が行われ(CheckMate-017, CheckMate-057)、進行期扁平上皮癌の1年生存率はオプジーボ群が42%、標準治療のドセタキセル群が24%、進行期非扁平上皮癌に対しては、1年生存率オプジーボ群51%、ドセタキセル群39%であることが発表され、国内で行われたⅡ相試験では、肺扁平上皮癌で奏効率25.7%、非扁平上皮癌19.7%と、有効性が確認されたため、2015年12月に保険適応となりました。


現在日本では、「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」が保険適応の対象となっています。


なお、8月6日付けの日経新聞では、腎がんへの使用が厚生労働省の部会で承認されたと報じられており、今後も適応は広がりそうです。


※2017年4月24日、「オプジーボ」は頭頸部がんの治療薬としても保険適用の許可がおりました(2017年5月8日追記)。




1回の投与で約73万円! 「オプジーボ」治療の費用は?


※以下の内容はコラム作成時(2016年8月29日)の情報になります。「オプジーボ」の薬価は2017年2月に100mgで約36万円に引き下げられました(2017年5月8日追記)。


高額新薬として話題になった「オプジーボ」ですが、実際にどのくらい治療費がかかるのでしょうか?


平成26年9月の新医薬品一覧表によると、点滴用の薬剤が20mgで150,200円、100mgで729,849円という価格になっています。


用法・容量では、3mg/kg(体重)を2週間間隔で点滴とあるので、体重60kgの人が1ヶ月に使用する価格を計算すると「270万円」と驚くような値段になり、一年使用すると一人あたり年約3,460万円かかります。(※「根治切除不能な悪性黒色腫」「切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」では、2週間間隔での摂取が可能です。また「根治切除不能な悪性黒色腫」のうち、「化学療法既治療」の場合は1回2mg/kg(体重)を3週間隔での摂取も可能です。)


オプジーボは保険のきく薬剤ですから、患者がこの金額をすべて負担するわけではありません。


また、高額医療費制度があるので、患者が負担する治療に関わる金額の上限は収入に応じて月額が定められており、それ超過分は保険者により払い戻されます。例えば、70歳未満で年収約370〜770万の方ですと、自己負担限度額は以下のように定められています(厚生労働省『高額医療費を申請される皆様へ』)。


80,100円+(医療費-267,000円)×1%


この計算式に従うと、医療費が月額270万円だった場合、


80,100円+(2,700,000円-267,000円)×1%=104,430円


となり、この残りを保険者や国が負担することとなります。


「オプジーボ」が適応となる肺がん患者は、全国で少なくとも5万人にのぼるといわれており、もし全員が使用すれば薬剤費は年2兆円になります。


現在の医療費は年間約40兆円、このうち薬剤代が10兆円ですから、この薬だけで薬剤費が1.2倍に跳ね上がります(4月6日付け毎日新聞より)。「国が滅びる」とまでいわれているのはこういうわけなのです。



「オプジーボ」は本当に効くの?


前述の国内臨床試験では、「オプジーボ」の奏効率は扁平上皮癌25.7%、非扁平上皮癌19.7%で、すべての患者に効くわけではなく、効果がある患者をあらかじめ選別するための特別な検査もありません。


この数字を見ればおわかりのとおり、「オプジーボ」投与の適応となった人で実際に効果があるのは4〜5人に1人の割合ですので、“夢の新薬”というような、過剰な期待は禁物かもしれません。



「オプジーボ」の副作用は?


「オプジーボ」の利点としては、他の抗腫瘍薬と比べて軽い副作用が挙げられています。


しかし、副作用が完全にないわけではありません。


小野薬品が運営する「オノオンコロジー」によると、起こりうる副作用として、間質性肺炎、重症筋無力症・筋炎、大腸炎・重度の下痢、1型糖尿病、肝機能障害・肝炎、甲状腺機能障害、神経障害、腎障害、副腎障害、脳炎、重度の皮膚障害など、発生してしまうと重篤になるものもありますので、副作用が出ないかモニタリングしつつ使用していく必要があると思われます。


また、今年7月19日に共同通信社が報じたところによると、「オプジーボ」使用中に、別のがん免疫療法を自由診療で行った男性が多臓器不全で死亡し、この他にも5人、がん免疫療法との併用で重い副作用が出たとの報告があり、小野医薬品はこうした治療を同時に行わないように呼びかけ、施設などの用件を定めて流通を制限しているそうです。


そして、日本臨床腫瘍学会は7月13日、タグリッソという抗腫瘍薬との併用で間質性肺炎が複数報告され、死亡例があると注意喚起を行っています。オプジーボを使用するに当たり、施設用件と医師の用件がいくつか定められていますが、ぜひともきちんとした条件のもとで治療を受けたいものですね。くれぐれも、自己判断で民間療法や自由診療の治療法と併用することはやめましょう。




厚生労働省は高額薬剤に対し「費用対効果」を検証



厚生労働省は今年の4月27日、医薬品や医療機器の費用対効果を検証することを発表し、その対象として医薬品7品目、医療機器5種類を指定しました。


医薬品には「オプジーボ」のほか、乳がん治療薬のカドサイラ、C型肝炎治療薬のソバルティ、ハーボニー、ヴィキラックス、ダクルインザ、スンべプラが挙げられています。費用対効果の検証結果は、今後の薬価などに反映される見通しとなっています。


費用対効果の観点から医薬品使用を制限するのは、欧米など先進国では医療費抑制のために広く行われています。


例えばイギリスでは、1999年に設立された国立医療技術評価機構(NICE)が「費用対効果」を算定し、新薬などを公的医療の対象にするかを決めた結果、がん治療薬や認知症薬などで対象外となったものが出てきて、使用できなくなった患者や家族の反発が相次ぎ、急遽予算が確保されましたが、財源の確保が追いついていないという現実があります(5月24日付け読売新聞ヨミドクターより)。


日本では、将来的な医療費抑制を目的として、日本赤十字医療センターの国頭英夫化学療法科部長などのグループが効かない患者を早期に見極めるための臨床試験を開始し、国立がん研究センターなどの研究グループは、効果が出た患者が、投与をやめても効果が続くか確認する研究を計画しているとのことです(8月1日付け読売新聞より)。


次々と開発される画期的な高額新薬。患者サイドとしては、従来の薬では効かなかったがんが治る可能性が高まることは喜ばしい限りです。


一方で、将来的には医療費抑制の必要性から、公的医療で賄う限界もでてくる可能性もあるのが、悩ましいところかもしれません。患者ご自身やそのご家族も、注意深く今後の流れを見守ってゆく必要がありそうです。



画像:Selected by freepik



参考情報:

オプジーボ.jp (小野薬品工業株式会社)

https://www.opdivo.jp/contents/

「オプジーボ」腎がんにも保険適用 厚労省部会が了承 (日本経済新聞)

http://www.nikkei.com/article/DGXLZO05753810V00C16A8000000/

第1部 新薬の光と影/4 「たった1剤で国が滅ぶ」(毎日新聞)

http://mainichi.jp/articles/20160406/ddm/002/040/104000c

オプジーボの主な副作用(小野薬品工業)

https://www.ono-oncology.jp/contents/patient/opdivo_about/06.html

免疫療法併用で男性死亡(共同通信)

https://this.kiji.is/128105825313013764?c=39546741839462401

ニボルマブ(オプジーボ®)投与後にEGFR-TKIを使用した患者に発生した間質性肺疾患について(日本臨床腫瘍学会)

http://www.jsmo.or.jp/news/jsmo/20160713.html

費用対効果検証、7薬品 「オプジーボ」など 厚労省公表(毎日新聞)

http://mainichi.jp/articles/20160428/ddm/008/040/079000c

薬の「費用対効果」とは?(ヨミドクター)

https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20130922-OYTEW52054/

オプジーボ点滴静注の非小細胞肺癌への適応追加に係る取扱いについて(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000109146.pdf

結果の概要(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/13/dl/kekka.pdf

オプジーボ®「一般名:ニボルマブ」切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんに関する効能・効果に係る製造販売承認事項一部変更承