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発達障害者支援法が11年ぶりに改正! その目的は? 障害者手帳の発行などこれからの課題点

2005年に施行された発達障害者支援法が2016年5月、11年ぶりに改正されました。その目的は、発達障害者の就労と教育への支援の強化。自閉症やアスペルガー症候群といった発達障害はこの法律ができるまで障害だとは認められず、公的な支援が遅れていました。今回の改正により、発達障害者がより生きやすい社会の実現が期待されますが、そもそも発達障害とはどんな障害なのでしょう? そして「発達障害者支援法」とはどんな制度なのか? 素朴な疑問をひも解きながら、今回の改正の経緯や概要についてご紹介します。

発達障害者支援法が11年ぶりに改正! その目的は? 障害者手帳の発行などこれからの課題点


発達障害とは? その種類や特徴


メディアでもよく取り上げられるようになった「発達障害」は、生まれつき脳の機能の一部に障害がある人で、人とコミュニケーションをとったり、対人関係を築いたりするのが苦手という特徴があります。多くは子どものころにわかりますが、最近は障害の認知度が高まり、大人になってから医療機関を受診して見つかる、といったケースも増えています。


具体的な定義は「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」(発達障害者支援法)とされています。代表的なものは以下の通りです。



主な4つの障害の特徴


自閉症

言語の発達の遅れ、対人関係・コミュニケーションの障害、興味や行動へのこだわりなどが特徴です。厚労省によると、最近ではおよそ100人に1、2人の割合と言われ、男性の方が女性の数倍多いと言われています。


アスペルガー症候群

広い意味で自閉症に含まれる障害。症状が自閉症と似ている一方、幼児期に言語の発達の遅れはありません。成長とともに健常者との違いが明らかになることが多いです。


学習障害(LD)

知的な発達には問題がないのに、「聞く」「話す」「読む」「書く」など特定のことを行うのが難しい状態のことを言います。


注意欠陥多動性障害(ADHD)

「集中できない」「じっとできない」「考えるよりも先に動く」などの症状が7歳までに現れます。学童期の子どもに3~7%存在し、男性は女性より数倍多いと言われています。




発達障害者支援法の施行により「障害」だと初めて認められる 


こういった発達障害者を支えるために2005年に施行されたのが「発達障害者支援法」です。


発達障害は自閉症を除いて多くの場合が知的障害を伴わないため、この法律ができるまでは「障害」だとは認められていませんでした。発達障害者を対象にした公的な支援体制が敷かれず、健常者と同じルールで暮らさなければならなかったのです。


また、周囲の理解が足りないために、障害による学習の進みにくさや対人関係の難しさに対して「本人の努力不足」「親の育児のせい」などと判断され、苦しい思いをする当事者や家族がたくさんいらっしゃいました。


発達障害者支援法では、発達障害を早期に発見する仕組み、学校や職場でサポートする体制を自治体が責任を持って構築することが義務付けられています。


同法施行から11年がたち、発達障害の認知度は確実に上昇しました。


近年では、早期診断のみならず、大人になってから発達障害と診断されるケースも増えています。当事者の声を引用してご紹介します。


「私が子どもの時は発達障害なんて言葉はなかったから、30代後半になってから発達障害の診断をうけて精神障害者保健福祉手帳がもらえました。周囲の人と同じようにできない理由がずっとわからなかったので、自分を責めなくていいとわかってホッとしました」
(広汎性発達障害・40代・女性)
http://houkago-step.com/system/3149/


反面、診断後の支援体制の整備が追いついていないという問題がたびたび指摘されてきました。




障害者権利条約の批准を背景に、超党派が改正案を検討


日本は2014年、あらゆる障害者への差別を禁止し、尊厳を守るための取り組みを促す国際条約「障害者権利条約」を批准(批准とは、条約に対する最終的な同意の手続きを意味します)


こうした障害者支援の機運の高まりを受け、超党派でつくる「発達障害の支援を考える議員連盟」が改正案を検討。改正発達障害者支援法が2016年5月、参院本会議で可決、成立したのです。



職場への定着、学校での個別計画作成など盛り込む


改正法の柱は、就労と教育支援の強化。子どもから高齢者までのどのライフステージでも支援が受けられるよう、切れ目のないサポートを行うことを自治体に促しています。就労と教育それぞれの支援の概要は以下をご参照ください。


[就労支援]

・働く機会の確保に加え、職場への定着を支援するよう規定。

・事業主は、働いている発達障害者の特性に応じた雇用管理を行うこと。

・都道府県に「発達障害者支援地域協議会」(仮称)を設置し、関係機関の連携を促進すること


[教育支援]

・学校は、発達障害児に合った目標や取り組みを定めた個別計画を作ること。

・福祉に関する機関との情報共有や連携を推進すること。

・いじめ対策を強化すること。


[その他]

・刑事事件などの取り調べや裁判で発達障害者が不利にならないよう、意思疎通の手段を確保すること。


これらの中でも大きなポイントは「発達障害者への支援は社会的障壁を除去するために行」という基本理念が加わったことでしょう。「社会的障壁を除去する」とは、発達障害者の生きづらさの原因となっている制度やしきたりなどを取り除く、という意味です。この理念を実現していくために、今後、自治体や教育機関、企業などによる具体的な取り組みが求められます。




専門家の育成、障害者手帳の発行… 浮かび上がる課題


理念の実現に向けてはこれからですが、改正法で言及されていない問題点もあります。


それは、発達障害に関する専門家がまだ少ないこと


発達障害に関しては2005年に法律ができた後にメディアでよく取り上げられるようになり、認知度が高まってきていますが、実際に診療に携わる医師などの専門家がまだまだ少ないのです。


福島大学大学院人間発達文化研究科が小児科医を対象に調査したところ、発達障害の診断について「避けたい」「できれば避けたい」が47%と半数近くに上りました。その理由として挙がったのが「勉強していない」「時間がかかる」などの声でした。


また、障害者手帳についても今後議論の余地があります。


厚生労働省の見解は「発達障害は精神保健福祉手帳の対象として明記されてはいないが、精神障害の範疇に入っている」というもの。発達障害専門の手帳制度はないため、自治体によって障害者手帳の取り扱いが異なります。


発達障害者の多くがまだ障害者手帳を持っていないため、今後、発達障害者に対する手帳の発行がスムーズに行われないことが出てくることも考えられるでしょう。


こうした現状を受けて、今回の法改正では、障害者手帳のあり方を検討することが付帯決議に盛り込まれました(付帯決議とは、法案を可決する際に参議院の委員会が意見を表明するために行う決議のことです)


今後、改正法をもとに自治体がしっかりと支援策を講じ、実行しているか。私たちが発達障害と法律について理解を深め、自治体の動きを見ていくことも理念の実現のために必要なことと言えるでしょう。



参考情報:

発達障害情報・支援センター

http://www.rehab.go.jp/ddis/

「発達障害支援法」改正、押さえておきたい7つのポイントまとめ(LITALICO発達ナビ)

https://h-navi.jp/column/article/837

発達障害者を支える、さまざまな制度、施策(発達障害情報・支援センター)

http://www.rehab.go.jp/ddis/%E7%99%BA%E9%81%94%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85%E3%82%92%E6%94%AF%E3%81%88%E3%82%8B%E3%80%81%E3%81%95%E3%81%BE%E3%81%96%E3%81%BE%E3%81%AA%E5%88%B6%E5%BA%A6%E3%83%BB%E6%96%BD%E7%AD%96/%E6%B3%95%E5%BE%8B%E6%94%B9%E6%AD%A3%E3%81%AB%E9%96%A2%E3%81%99%E3%82%8B%E6%83%85%E5%A0%B1/

発達障害者支援法の改正について(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000128829.pdf

理解する ~発達障害って何だろう?~(政府広報オンライン)

http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/contents/rikai.html


著者情報

治療ノート編集部
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